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2008年10月27日 (月)

ボストン・ローにおける1Lライフ概論

当地のロースクールでは、米国人学生は、一般に「JD(ジュリス・ドクター)」という3年間のコースを履修します。そのJDコースの1年生のことを「1L(ワン・エル)」と呼びます。

「ロースクールにおけるワークロードを100とすると、1Lが99で、2Lと3L合わせて1かな」と、昨年3Lの学生から聞きました。また、Scott Turow著の小説「ONE L」にも、ハーバード・ローにおける1Lライフの大変さが描かれています。ロースクールの学生が、かくも1Lライフを負担に感じるのは、最初に法概念の基礎を理解するのが大変、ということもあるでしょうが、1L時の成績が将来(の就職)に直結する、というところが大きいと思います。1L時の成績が良ければ、裁判所のクラーク、大手渉外法律事務所に就職できる可能性が高まりますし、ロー・レビューの編集委員になれる可能性も高まります。

では、我らがボストン・ローにおいて、そんな1Lライフはどんな感じなのでしょうか?

今学期、同一Sectionの1L基礎科目を3科目履修しているおかげで、最近、ようやく少し見えてきたような気がします。「同一Sectionの」と言う所が一つの大きなポイントなのですが、それは以下をお読み頂ければ分かります。

ボストン・ローの今年の1L学生は約270名。90名ずつ、Section A、B、Cと3つのセクションに割り振られ、(個人単位ではなく)そのセクション単位授業を受けます。1L学生には科目履修選択の余地はなく、強制的に以下の基本科目を、1年かけて勉強することになります。
①Constitution(憲法)
②Contracts(契約法)
③Criminal Law(刑法)
④Criminal Procedure(刑事手続法)
⑤Procedure(民事手続法)
⑥Property(財産法)
⑦Torts(不法行為法)
⑧Writing Seminar(ライティング・セミナー)

例えば、前回の投稿で登場した1L学生トラさんの場合、Section Cに属していますので、この秋学期の履修は、
C1 Contracts(Pettit教授。週3)
C1 Procedure(Farnsworth教授。週3)
C1 Property (Lawson教授。週3)
C1 Torts(Silbargh教授。週3)
⑤Writing Seminar(多分、週1)
となります(なお、①②③④は全て520号室で行われますので、移動の手間はゼロ。そのあたりの便宜も図られています)
私は今学期、上記5科目のうち②③④を履修しています。都合週9回も彼らのクラスに顔を出していますから、Section Cの1L学生に間違えられるのは避けがたいことだったわけです(大学すら間違えていて、私のメールアドレスをSection Cのメーリングリストに入れてしまっていますし)。最近、9月の頃と比べて、クラス全体が明らかに打ち解けてきている様子が見てとれますが、同じメンツで同じ時間をずーっと共有しているわけですから、自然な成り行きといえるでしょう。1年かけて延々とゼミをやっているようなものなのですから

概して、それぞれの科目は、完全に独立しているかのような誤解があるかもしれません。しかし私には、それぞれの科目が、有機的に強く関連づけられて教えられているように感じられます(バー受験を通じて法の全体像だけは知っていますから、より強く、それが感じられるのでしょう)。Section Cの教授同士で、そのあたりを少し意識している様子も伺えます。そういえば先週金曜日も、「えーっと、Silbarghさん(Torts担当)はここ説明したかい?」と、Farnsworth御大(Procedure担当)が言っていたような・・・。あと、1L基礎科目ではありませんが、Evidence(証拠法)は全ての授業において頻繁に登場してきます。

よく言われることですが、私も、1Lの基礎科目の授業は、知識の定着というより、論理的思考力(reasoning)の醸成に主眼が置かれていると感じます。特に、Tortsにおいてその傾向が顕著です。自分なりに考えられるのならば、まあ客観的な出来映えはそこそこでもいいや、という割り切りが随所に感じられます。会社で言えば、「とりあえず新人に仕事をさせてみて、自分で考えさせるクセを付けさせよう」という、上司のまなざし近いものがあります。

今回、私がSection Cの1L科目をたくさん履修しているのは、全くの偶然です(多分、ジョンも気づいていないでしょう)。これは非常に嬉しい偶然でした。米国の弁護士育成システムの最初の一歩を、目の当たりにできているわけですから。私の上司の口癖は「現場に出て本質を見極めろ」ですが、少しそれができたような気もします。

そんなわけで、幸せをほどよくかみ締めながら、これからロースクールの自習室に行って、1L科目の予習をしてこようと思います。

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